『医療法人化したら求人に有利』は本当??

法人化のメリットの一つとして「求人に有利」があります。

確かに社会保険加入は求職者にとってメリットがあるかもしれませんが、果たして本当なのでしょうか?

今回は医療系人材エージェントの梅澤さんに求職者がどのように考えているのかインタビューしました。

 

【株式会社DEPOC 梅澤晃子さん】

2008年~医療系人材紹介会社のエージェントとして活躍。

2020年 株式会社DEPOCで有料職業紹介事業を立ち上げる。

 

【インタビュアー】

黒田めぐみ 医療法人専門の行政書士

 

Q1.医療系人材エージェントって?

「求人」というとハローワークや求人広告への掲載を思い浮かべるのですが。

エージェントとは違うのですか?

 

梅澤さん

はい、違います。

「お見合い結婚の仲人さん」を思い浮かべてください。

具体的には、お見合いをして頂くのは、医療機関と求職者。仲人が、医療系人材エージェントです。

医療機関と求職者の双方からのご希望や具体的な条件をヒアリングしてマッチングさせるのが、私たちエージェントの仕事です。

正確には「有料職業紹介事業」といい、求人(医療機関)及び求職(医師・看護師)の申し込みを受け、求人者と求職者の間の雇用関係の成立をあっせんする仕事です。有料職業紹介事業は厚生労働省の許可が必要です。

 

Q2.個人院よりも医療法人の方が求人に有利なのは本当?

人材確保に苦労しているクリニックも多いと思います。

「医療法人化した方が求人に有利」という話も聞きますが、現場目線として本当のところを教えてください。

 

梅澤さん

「有利」「不利」、という言い方よりも、ご紹介がしやすいか、しやすくないかというと、医療法人の方がご紹介しやすいと云えます。

求職中の医師や看護師の大半は、ある程度の規模の医療機関に就業中(または就業経験あり)です。

そのため、社保や医療賠償保険の加入は「わざわざ条件として挙げるまでもなく」必須条件、という方が多く、社保や医療賠償保険の加入が「あたりまえ」と思っている方が大半だからです。

社保未加入だと「現職より条件が下がる」ことになります。

そうすると、医療法人は社会保険加入の義務があるので、紹介しやすくなってきます。

もちろん個人クリニックでも社保完備、医療賠償保険加入をしっかりされている医院もあります。

しかし、どうしても「個人経営は昔ながらのやり方をしている」「安定しているの?」「家族経営で人間関係が密」といったイメージを持たれやすいです。

また、医師で非常勤アルバイトを探している方の中には、クリニック開業を視野に入れている人も少なくありません。 医療法人化しているクリニックで働いて経営を学びたい、実際の数字を知りたい、スタッフとのやりとり等開業に向けたことを勉強したい、というご希望もあります。

 

Q3.求職で求める具体的な希望は?

社保加入等は必須条件であれば、具体的にどのような希望や条件がありますか?

 

梅澤さん

医師はプライベートな時間や家族との時間の確保を希望される方が多いです。現在所属している職場が激務なので働き方を変えたい、といったご相談です。それでも年収は下げたくない等、個々の条件は異なってきます。

看護師は、夜勤の回数が今よりも少ない所という希望ですね。夜勤無とまではいかなくても、適正な回数で夜勤があるとか。

このようにライフ・ワーク・バランスの確保を求められることが多いです。

ただし、このように希望される方でも、皆さん「社保加入・医師賠償保険加入」などの条件がベースとなっています。

なので医療機関(就業先)が「ゆったりしているけれども社保未加入」となるとお話を先へ進めるのは難しくなってきます。

 

Q4.「個人院がいい」という人は何を求めている?

求職者の中には当然、「個人院がいい」「結果として個人院が良かった」という方もいると思いますが、そのような方は何を求めているのでしょうか?

 

梅澤さん

はい、少数派ではありますが、あえて個人クリニックを希望される方もいます。

医師の場合は、非常勤でイレギュラー勤務したいとか、要望や希望を臨機応変に聞いて頂けるとか。

看護師さんでパートやアルバイトを探している方は、保育園のお迎えとか学校行事等で時間の融通がききそう、といったイメージがあるみたいです。

全般的に個人クリニックを希望する方は、人間味のある対応をして頂ける所を希望される傾向にある様です。

例えば、税理士や社労士が積極的に入っていなかった個人クリニックで勤務された経験がある方ですと、こういった士業の方が入っていると勤怠管理が厳しいのでは?と思われる方もいます。

医療法人での勤務を希望される方は、逆にこれらのイメージを敬遠するのですが…

掘り下げて希望を聞くと、求職の目的が明確になっていきます。

その結果、当初ご本人がイメージしていた医療機関とは全く異なっているところを紹介したり、求職が不要とわかったりすることもあります。

就職後にこのような相違があれば、医療機関と求職者の双方が不幸になります。

ミスマッチを防ぐため、私はご面談で求職者の希望を掘り下げて確認するよう努めています。

 

インタビューを終えて

「医療法人化のメリット」として挙げられる「求人に有利」ですが。

私個人の実感としては、社保完備の個人クリニックも少なくないという印象を抱いています。

また、医療法人といっても、全国の法人の8割以上は一人医師医療法人です。

つまり、大部分の医療法人は「家族経営」に近いのではないでしょうか。

「医療法人とは何か」を正確に答えられる人も意外に少ないです。

それでも、個人クリニックと比較して「安定している」「従業員の労働管理もしっかりしている」というイメージが根強い、と感じました。

次回は医療系とは全く無関係の職業の友人に「主婦からみた医療法人のイメージ」について取材してみたいと思います。

 

<取材協力>

株式会社DEPOC 梅澤晃子様

〒222-0033 神奈川県横浜市港北区新横浜2-13-6 第一K・Sビル5階

DEPOC MEDICAL ASSOCIATES / https://www.depoc-medical.jp/

【有料職業紹介事業許可番号 14-ユー301699】